病気より辛い質素な食事

今から遡ること1か月。私は親戚の結婚式へ参加していた。

土曜日に教会で式を挙げ、その後新郎の親宅で式後の食事とパーティを朝方まで行った。
翌日も前日式に参加した面子で同じ場所でホームパーティが行われ、老若男女の親戚が集まる中私は親戚の子供たちと遊ぶ。

こういう集まりがあると毎回私は子供たちにたかられ、その世話役になる。子供と遊んでいる方が楽しいからいいのだが・・・
どの集まりへ行っても子供たちから好かれるため親戚から「ハーメルンの笛吹き」というあだ名を付けられた。

この日も例に漏れず子供たちと一日中遊んだあと、2時間の帰路を考え16時ごろ皆に別れを告げた。

運転を始めてからすぐに私は疲れを感じたが、二日連続でエネルギー無限大の子供たちの相手をしていたのでただ単に疲れているだけだと思っていた。
しかし、その疲労感は時間を追うごとに増していき、あまりの疲れに口から「疲れた」という言葉が出てくるほどになっていった。

その日の晩、私は熱にうなされ翌日には喉に異常を感じていた。
ただの風邪だと思っていたその病は日に日に喉の腫れと痛みを強め、ついにはまともに食事を摂ることができなくなり、毎日スープのみに。

私を尻目においしいもの頬張る家族とそれを食べられない、スープしか食べられないことに私のイライラは限界に。
翌日、背に腹は代えられないと意を決して村の医者を訪ねた。

私の喉をちらっと見たあと医者は抗生物質の処方箋を出してくれ、8日間それを摂ることに。

くやしいがその抗生物質は摂りはじめた直後から効果を発揮し、翌々日にはかなり回復しほぼ通常通りに食事を食べられるようになっていた。
それから1週間半ほどおいしいものを普通に食べられるという幸福感に満ち溢れた生活を送っていたのだが・・・

先週の火曜日、再び喉にあの感覚が。

まさか・・奴は抗生物質で完全に消滅したはずッッ!!!認めん!認めんぞッッ!!!!
今週土曜日の夜は村の友達とみんなでクラブで大騒ぎすると約束したのにィ!!!

全神経、精神を使って必死に病の再発を食い止めようとする努力も空しくそれはじわじわと再び私の喉を蝕んでいき・・・

ついに来てしまった。決戦の土曜日。

その朝、あまりの喉の腫れにしゃべることの出来なくなっていた私は禁断のクスリを手に入れるべく、再び村の医者のもとを訪れた。

医者「どうされましたぁ?」

ぺ「アウアウアー(^q^)」

医者「あー、これはもうウチじゃどうしようもないですねー」

ぺ(は?薬くれよ)

医者「すぐにアヌシー病院の緊急外来に行ってください。朝ならすいてますよー」

ぺ(あそこに行けばより強力なクスリが手に入るのか!?しかし前に腰をいわしてお婆様に勝手に救急車を呼ばれ強制送院された時は5時間も待った・・・念のため仕事道具とケータイの充電器を持っていこう)

ということで一旦世田谷ベースに戻り準備を整えた後、わが愛車で単身クッパ城(アヌシー中央病院)へと向かった。

~病院にて~

受付「どうされましたぁ?」

ぺ「アウアウアー(^q^)」

受付「どうされましたぁ?」

ぺ「アウアウアー(^q^)」

受付「あ、これに記入してください。あと今すぐ血圧と体温計りますねー。で次はあっちで受付してください。」

ぺ「アウー(^q^)」

受付2「電話番号、住所etcを教えてください」

ぺ「アウアアウアウアー(^q^)」

受付2「もっと大きな声で言ってくれますか?」

ぺ「(^q^)・・・」

受付<「その人しゃべれないのー」)

最初から伝えておいてくれよ・・・
ということで必要事項を紙に書いて渡して待っていると。

看護師「はーい、血圧と体温計りますねー」

ぺ「(^q^)・・・」

受付<「その人の血圧と体温もう計ったよー」)

看護師「(私に向かって)チッ、何で言ってくれないの?」

ぺ「(^q^)アウ・・・」

受付<「その人しゃべれないのー」)

どんなけ連携取れてへんねん。

待つこと数分後、ある看護師に案内され、迷宮のような巨大病院の廊下を歩きある部屋へとたどり着いた。
そこで私を待っていたのは厨二病の気配のある医師と拷問具のような革張りの椅子、そして数々の怪しい道具だった。

不安になる私を気に留めることなく医師は私を例の椅子へと案内し、淡々と呟くように説明をしながらマスクとヘッドライトを装着し始めた。

・・・いったい何が始まるんだ・・・

彼はちらりと私の口内を見たあとこう言い放った。

医師「入院だね。月曜には出られるよ」

は?強力な魔法のクスリを処方してくれて、今夜には良くなって、みんなでパーリナイじゃないのかッ!?
入院ってなんだよ!てかなんでだよ!抗生物質の点滴か!?かわいい看護師さんに看病してもらえる!

医師「これでうがいして。飲み込んでしまっても問題ないけど、できるだけ長く喉にためて。5分ぐらいしたら喉の感覚が無くなってくるから」

え・・ちょっっっと待って。なにすんの!?

恐怖に青ざめる私に医師はゼリー状のモノが入ったコップを私に手渡し、洗面台を私に示した。
このゼリー状のモノは私を苦しめた。とてつもない吐き気に襲われる。

やっとのことでうがいを終え例の椅子に再び腰かけると何やら医師が注射器を用意している・・・
デカい。明らかに採血用ではない。

医師「今からペーターさんの喉にたまった膿をこの注射器で吸い取るね。採血用の針と違って太いから少し痛いかもしれないけど我慢してね」

え、麻酔してんのに痛いってどういう・・・ブスッ

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!

実際にはあまり痛くなかったのだが、あの感覚!今思い出すだけでも寒気が走る。

医師「すごい・・いっぱい取れましたね。はいじゃーちょっと目瞑って」

なんだ?ご褒美のチューでもしてくれるのか?相手男だけど。

ザクッ

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!オゥエッ!!

医師「膿がまた溜まらないように少し切っといたよ。はい、これで口をすすいで。少し血が出るけど心配しなくていいよ。でももし何かあったら隣にいてるから叫んでね。あ、叫べることができるならの話だけど」

それを言った後彼は姿を消したのだが、実際には隣にいていなかった。全ては叫ぶどうのこうのが言いたかっただけのようだ。

その後待っているとかわいい看護師さんが1泊200€の高級シングルルームへと案内してくれた。
感染の恐れがあるので個人部屋なのだそうだ。ラッキー

しかし人生初の入院。勝手がわからず部屋をうろうろしているとかわいい看護師さんが点滴をもってやってきた。
今日から二日間は繋ぎっぱなしだそうだ。よくテレビで見るあの点滴。患者が廊下を歩くときに持っているコロコロ付のあの点滴をまさか私がつける羽目になるとは・・・

ベッドに座り持ってきたパソコンで仕事をして暇をつぶす。本当に仕事道具を持って来ておいて良かった!これがなかったら暇で死んでいるところだった(テレビは有料)

時間は過ぎ、お待ちかねの夕食タイムがやってきた。
初めての病院食に胸躍らせながら待っていると・・・来た!
美食フランスの国の病院食はいったいどんなおいしいものが出るのだろうか♪

・・・。なんだこれ?ウソだろ?マジかよ!

持ってきた看護師「ボナペティー♪」

いや、ボナペティじゃねぇだろ!

それにしてもひどい・・・食べるのが大好きな私にとってこれは死の宣告も同然。
翌日の昼もこれと同じ食事(バターなし)を渡されたのだが、こんな食事を続けていたら病気が治る前に自殺してしまいそうだったので看護師を捕まえて交渉開始。女の人だったため私のキラースマイルを駆使した結果、魚と米とスープをゲットすることに成功した。

これを見た看護師さんが

看護師「これだけ食べられるのなら今夜は普通の食事で大丈夫そうね」

お!ということはまさかこのゴミのような食事は特別食で普通はもっと豪華(普通)なのか!?
ということで夕食に期待が高まる。

ちなみに私の喉は再び腫れてしまったため、前日と同様のことをまた・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!

しかし喉というのはすごい。切られてもすぐに傷がふさがり普通に食べられる。人体の神秘!

そしてお待ちかね夕食タイム!!今度こそはフレンチな料理が飛び出してくるはず!!

持ってきた看護師「ボナペティー♪」

どうだッッ!!

・・・。

明日退院すると思うし、もうええわ。

その翌日、医師のOKがおりて無事に退院することができました。
そして何よりも嬉しかったのはやはり・・・

おいしいものが食べられること!!!神様ありがとーーー!!